地元の組合では、5年ほど前から海底耕耘を行なっている。
海底耕耘とは
海底耕耘とは、海底に大きなクワみたいな器具を沈め、そこに太いロープを繋いで船で引っ張り海底を耕すことをいう。
クワのサイズは約3mほどで、水深10~20m付近を耕す。その時に海底に沈んでいるゴミも一緒に上がってくる。
所属している組合では1年ごとに海底耕耘をする漁場を変えて6年ごとに元の場所に戻るサイクルをとっている。そうすることによって、一度掻き揚げられて海底の栄養が少なくなったのを、6年かけて回復させようという狙いだ。
海底耕耘を行なう理由
海底耕耘を行なうきっかけとなった、前年度の採苗不調では歴史的な採苗不調だった。これは親父が50年くらい牡蠣を作ってきて初めての出来事だった。
その原因の一つが、海が綺麗になりすぎたことによる、海の貧栄養化だと考えられる。
貧栄養化とは、海の生き物の餌となる植物プランクトンが増殖しにくい環境になっていることで、その原因はリンや窒素などの植物プランクトンが光合成に必要な物が不足している状況である。
植物プランクトンに対し食物連鎖の上位にいる牡蠣は、植物プランクトンが減少すると牡蠣も減少する。ただそれにはタイムラグがあり、ちょうど採苗時期にあたったため採苗不調が起こったと考えている。
海底耕耘を行なうと、海底にあるリンや窒素といった植物プランクトンの増殖に必要なものが巻き上げられる。それと同時に海底に眠っている植物プランクトンの種も同時に巻き上げられる。
巻き上げられた植物プランクトンの種が日光の届く範囲までいくと発芽し、光合成を行なうことにより増殖し始める。その光合成に必要なのが一緒に巻き上げられたリンや窒素だ。
植物プランクトンが増えると、牡蠣の餌が増えると同時に、他の動物プランクトンなどの植物プランクトンを餌とする生物も増える。動物プランクトンが増えるとそれを餌とする小魚が増える、小魚が増えるとそれを餌とする魚が増える。
こうしたサイクルにより海が豊かになっていく。
海底耕耘の結果と感想
海底耕耘を5年間行ってきた結果、牡蠣の赤ちゃんを採取する際の採苗不調が今のところない。それが海底耕耘の結果なのかは不明だが、効果はあるとみて良いと思われる。
また、海底耕耘を行なうにあたって、普段は回収することのできない海底に沈んでいるゴミの回収も同時に行うことができるため、一石二鳥である。
個人の感想としては、ゴミの回収は目に見えて行われているし、海底耕耘を行ないはじめて以降、採苗不調が起こってないことから、海底耕耘はやったほうが良いと思う。
ただ、重労働であるのは確か。
この作業は
SDGsの「海の豊かさを守ろう」
に直結する。
この作業をすることで、将来的に牡蠣の生育環境が良くなることを願う。
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